低学力に思う

 30年以上前のことだが、私は新任で、ある伝統校の定時制課程に赴任した。そこでは、ほかの高校の全日制を中退した者、全日制に入れない者が多数入学してきて、本来の定時制である「勤労青年の学びの場」からは程遠い状況でした。

 そんな定時制で数学を教えることはかなり厳しかったです。「九九のあやしい」生徒が多数いて、文字式の計算(数学Ⅰの最初の単元)どころではありませんでした。学力がそこそこある生徒もいたので、授業で九九を練習させることはできません。「九九のあやしい」生徒を放課後に呼んで補習することにしましたが、呼び出しても来ません。補習に来ない理由は、「そんなこと今更できるか」というプライドの高さと、勉強嫌いでした。

 「九九があやしい」というのは、例えば、7×1=7、7×2=14、7×3=21、7×4=28、...と、順番に言わせるとなんとか答えられるのですが、いきなり、7×6は?と問いかけると答えられない...と、いうことです。頭の中で7を次々に足して答えているので、理解はしているのですが、暗記してない。時間をかければ答えられるから、「九九ができない」わけではなく、「九九があやしい」という表現にしました。

 「九九のあやしい」生徒は、「九九ができない」とは思っていない。プライドも高い。九九の練習(暗記)などやろうとしないのです。

 定時制課程では、「引き算のできない」生徒もいました。彼をA君と呼びましょう。A君は、14-8とか16-9という、桁下がりの引き算が暗算でできませんでした。

 A君は、これらの計算をどうやったかというと、例えば、14-8ならば、棒を14本描き、8本消す方法で答えを出していました。

 この方法は、おそらく小学校か中学校の先生が最後の手段で教えたのではないかと思う。どう教えても彼は暗算で答を出すことができなかったのではないか。また、これらの計算ができないと引き算のひっ算ができない。

 それでは、我々は、これらの引き算を頭の中でどうやって暗算で計算しているのだろう。

 例えば、\(14-8\) なら

$$14-8=(10+4)-8=4+(10-8)$$

$$=4+2=6$$

 と、小学校では教えるが、実際、頭の中では$$8+6=14$$と逆算して、答えを6と出すのではないだろうか。

 暗算は慣れである。九九は暗記。簡単な引き算は「習うより慣れろ」である。2桁×1桁の計算も、計算過程がどうであれ、慣れれば暗算でできるようになる。

 中学からの数学では、ある程度、頭の中で計算がイメージできないと解法に結びつかないことがある。そのためにも暗算は重要である。

 どれだけ多くの計算問題に取り組んだのかが、計算力に現れる。ドリルが大切なのは昔も今も同じだと思う。

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アクトイン代表:熊原