高等学校入学試験(学検)に向けて、多くの中学3年生は受験勉強に励んでいると思う。
そこで、受験生の数学の目標得点は何点ぐらいだろう?
下の表とグラフ...。表は学力検査の過去5年分の平均点である。グラフは過去3年間の数学の得点分布だ。この表はH31年の学検までのデータである。令和2年のデータは令和2年5月中旬ごろ公表される。
この二つの資料で分かることは、まず、「数学の平均点は他の教科と比べてかなり低い」「平均点付近に集中し、高得点を取る生徒は少ない」ということではないだろうか。例えば、昨年の学力検査では、平均点が42.3で80点以上がほとんどいない。
そこで、数学の目標得点。難関校を受験する中学生は、おそらく、75点以上を目指していると思う。数学に自信のある者はもっと高得点を狙っているのではないか。だから、式の計算から2次関数、証明問題、図形の作図、確率、図形の面積問題まですべての分野を漏らすことなく勉強することだろう。ただし、難関校のほとんどは学校選択問題を実施しているので、高得点を取ることはさらに難しくなる。
《余談》
私が勤めていたある偏差値64程度の高校では、現在、学校選択問題を実施している。数学の平均点が惨憺たる結果で、なんと**点にとどかない。無理して学校選択問題にする必要はないと思うが...見栄なんですかね~
問題は偏差値50以下の高校を志望している生徒の勉強内容だ。合格することが目標だから、数学の目標得点を35点ぐらいにしているだろう。え?そんなに低いの?と驚かれるかもしれないが、中堅校以下の高校では、数学の平均点は県の平均点よりも低い。なぜなら、偏差値の低い高校ほど数学を苦手としている受験生が多いからだ。私は偏差値50ぐらいの高校にしばらく勤務し、答案の採点をしてきたが、その高校の平均点が県の平均点を超えたことは一度もなかった。10点前後の低得点者も珍しくない。20点前後もかなりいたので平均点は30~35点ぐらいになっていた。
中堅校を受験する中学生は
数学の目標得点は35点。40点取れれば大成功!45点取れればバンバンザイ🙌
ということになる。
そして、中堅校を受験する中学生の受験対策は
「平易な計算問題を取りこぼすことなく確実に回答する」ことだ。
下の表は、平成31年度の学力検査における数学各問の正答率である。
正答率の高い問題は、1の(1)~(10)。基本的な問題である。(10)は2次関数の基本性質を知っていれば答えやすい問題だが、正答率がさほど高くない。これは、2次関数を苦手としている中学生が多いことを示している。
<参考>昨年の入学試験(学検)の大問1
したがって、塾などでは、中堅校を目指す中学生に対しては、2次関数や証明問題などの指導よりも、基本的な計算問題の演習が中心になる。これは、合格するためには必要な手段だと思う。
しかし、高校でも2次関数を指導する。内容は、上に凸、下に凸、平行移動、最大値最小値などレベルアップする。なのに、平面上に点を打てない(示せない)生徒や、直線が描けない生徒がたくさん居る。中堅校の話である。1次関数、2次関数に関して明らかに勉強不足である。せめて、\(y=ax+b\) や \(y=ax^2\) のグラフぐらいはしっかり描けるようにしておいてもらいたい。
大問3が2次関数の問題であるが、(1)は2次関数を知らなくても答えを出すことができる。1次関数の\(y\)軸との交点C(切片)と、点Dの\(x\)座標の意味が分かっていれば...。正答率が50%に届かないから中学生の半数は、平面図形の基本となる「点と直線」が理解不足ということになってしまう。高校の2次関数を学習するには厳しい状況だ。
(2)は少し考えるが、高さが同じなのだから、底辺の長さの比が面積比になることに気が付けば、あとは、計算だけになる。しかし、その計算がなかなか手ごわい。正答率はなんと2%。点Bの\(x\)座標を\(k\)とか\(t\)という未知数に置くことに気が付かないとかなりてこずる。
あ!いつの間にか問題の解説をしてしまっている。
受験勉強では、2次関数や図形の証明をあきらめないで勉強してほしい。高校に入ってから数学でつまずかないためにも。図形の証明は、「物事を理論的に考え表現する能力」を身につける意味でも重要です。
《余談》
令和2年度入学試験(今回の入学試験)から、埼玉県東部地区のK女子高校が学校選択問題を導入する。
あまりにも無謀としか言いようがない。K女子高校は偏差値60程度。おそらく、数学は低得点の争いになるだろう。数学の平均点を40点以下と予想する。外国語学科があるので、英語に学校選択問題を実施するのは理解できるが、数学には無理を感じる。数学を苦手とする中学生は、敬遠するだろう。入試倍率が低いのは、学校選択問題を実施することも一因になっているのではないか。
学校選択問題を一度実施してしまうと、「次年度からはやめます」とは、なかなかいかない。プライドや世間体を気にして、引っ込みがつかなくなる。
苦しむのは受験生だけだ。