私は、34年間、県立高校で数学を指導してきました。高校の数学では公式を証明して、その公式を使って問題を解くことが通例ですが、小学校の算数では公式というのがありません。その分、高校の数学よりも小学校の算数の方が指導は難しいと、私は感じています。
小学校では本質的なことを説明しなければならないことがあります。たとえば、分数の割り算では、割る分数の逆数をかけますが、何故そうするのか小学生に「解りやすく」教えることは、難しい。本質的なことは、説明するとなると、なかなか難しい。「理解できる」なら「説明できる」か、というと、そうではない。「分数の割り算で逆数をかける」というのはその典型的なことがらだ。
例えば \(\frac{2}{3}\div\frac{5}{7}=\frac{2}{3}\times\frac{7}{5}\) をどう教えるか?
一つの手法として、繁分数を使った指導法がある。まず、
$$\frac{2}{3}\div\frac{5}{7}=\frac{\frac{2}{3}}{\frac{5}{7}}$$
と、繁分数で表す。そして分母が1になるように、分母分子に\(\frac{7}{5}\)をかける。
$$\frac{2}{3}\div\frac{5}{7}=\frac{\frac{2}{3}}{\frac{5}{7}}=\frac{\frac{2}{3}\times\frac{7}{5}}{\frac{5}{7}\times\frac{7}{5}}$$
あとは、分母が1になることより以下のように \(\frac{2}{3}\div\frac{5}{7}=\frac{2}{3}\times\frac{7}{5}=\frac{14}{15}\) となることを理解させる。
$$\frac{2}{3}\div\frac{5}{7}=\frac{\frac{2}{3}}{\frac{5}{7}}=\frac{\frac{2}{3}\times\frac{7}{5}}{\frac{5}{7}\times\frac{7}{5}}$$
$$=\frac{\frac{2}{3}\times\frac{7}{5}}{1}=\frac{2}{3}\times\frac{7}{5}=\frac{14}{15}$$
しかし、この指導だと、すべての数(有理数)は分数に変形できることから教える必要がある。\(2=\frac{2}{1}\)、\(3=\frac{3}{1}\) と、表現できることを教えないといけない。
個人的にはこの教え方がしっくりいくのだが、小学生にはかなり準備が必要ではないかと思う。分母分子にある式をかけて変形する方法は、高校でもよく使う。中学生向けの教え方かもしれない。
ネットで検索すると、ある一定量の液体を等しい数量に分ける方法で指導する仕方も紹介されていたが、なんかしっくりしない。小学校ではどう指導しているのだろう。
他にも、教える側にとって悩ましいテーマがある。
- 円周率は循環しない無限小数(無理数)である。
- 0で割ることはできない。
- 鶴亀算
など...